家族では対応の難しい、軽度の発達障害や知的障害

軽度の発達障害 知的障害 精神疾患,相談ノウハウ

家族が「軽度の発達障害(または知的障害)」との診断を受けています。学校に通っている間はサポートが得られましたが、最近は支援者とも没交渉になりつつあります。問題行動も増えてきました。どうしたらよいでしょうか?

発達障害や知的障害でよくある相談

近年は、軽度の発達障害や知的障害に関する家族からの相談が増えています。対象者(本人)は20~30代で、多くは幼少期から診断を受け、学校や公的機関の支援も受けてきました。しかし症状が軽度であるがゆえに、義務教育課程を終えたあたりから支援者とも没交渉になり、年を追うごとに家族での対応が難しくなった、という相談です。

本人がすでに療育手帳を取得しており福祉のサポートなども受けているにもかかわらず、家族が本人の問題行動に手を焼いているケースでは、弊社の経験上、障害そのものの重症化というよりは別の要因で問題が肥大化してしまっている場合が多いです。

義務教育の間は学校の先生を中心にたくさんの人に見守ってもらえますが、卒業後は環境がガラリと変わります。だからこそ専門家(支援者)とのつながりが重要ですが、以下のような理由から居場所を失っています。

・高校は卒業できたが就労先が決まらない

・障害者雇用枠での就労が決まったが、継続できなかった

・就労継続支援事業所(A型やB型)への通所もやめてしまった

このようなケースでは、本人だけでなく家族も、支援者とうまくコミュニケーションが取れていないことが少なくありません。社会からの孤立により家族への依存度が増し、家族間での衝突も増え、そのストレスから二次障害(強迫性障害や不安障害、拒食症など)を発症することもあります。

これらの二次障害については、早期に発見することにより精神科病院での治療効果が期待できますから、家族はその片鱗を見逃さないことです。

注意点として、軽度の発達障害や知的障害では、年を追うごとに利用できる専門機関が減っていきます。だからこそ本人だけでなく家族も、幼少期からの支援者とは関係を継続しておくことです。

発達障害や知的障害への対応の問題点

障害がある以上、一生涯、子供の面倒を見るつもりで関わり合ってきました。しかし年齢があがるにつれて対応が難しくなり、親子関係も悪化しています。家族(親)が改善すべき点は何でしょうか。

弊社の相談事例を振り返ると、このように本人との関係がこじれていく家庭(親の対応)にはある共通項があります。それは、親自身の「障害」に対する捉え方です。

具体的に言うと、本人の言動に関して、資質や特性、理解度を見極める前に「障害があるから」で済ませてきているのです。以下はその一例です。

・障害を不憫だと思うあまりに、本人から「欲しいものがある」「やりたいことがある」と言われると、後先を考えずにお金を出している

・日常の細々したことから進路のことまで、本人の意見を聞かずに「この子はこうしたいに違いない」「こう思っているはず」と親が先回りして決めている

・支援者との関係においても、本人に対する質問に対して親が横から口を出して説明したり、支援者の指導に対して「この子は障害があるから、そういうことはできなくてよい」と言ったりする

・ルール違反や違法行為に対して、「言っても理解できないから」と叱ったり説諭したりしていない

万事がこの調子では本人は「してもらう」ことに慣れてしまい、第三者とコミュニケーションを図る機会を失ってしまいます。結果的に、親のいないところでは自分の気持ちを説明できず「相手が理解してくれない!」と癇癪を起こし、それが暴言や暴力につながっていることもあります。

障害が理由で込み入った話は難しくても、意思表示や、感謝・謝罪の気持ちを伝えることはできるはずであり、その機会を奪ってはなりません

支援者との関係をいかに継続するか

子供が幼い頃は、「自分たち親が一生涯、面倒をみればいい」と思っていても、現実的には加齢とともに難しくなっていきます。子供に「社会で生きていって欲しい」と願うならば、支援者との関係を大切にし、協力して本人にはたらきかけることです

とくに子供の成長期を知っている支援者や、学校の先生は、その子の特性をよく知っています。弊社も本人を知る手がかりとして、当時の学校の先生にお話を伺いに行くことがありますが、親身になって相談に乗ってくださいます。今は疎遠になっていたとしても、家族の困りごとに関して何かしらのヒントを持っている場合もありますから、相談してみるのも一つでしょう。

一方で、親自身も第三者とのコミュニケーションが苦手で、支援者とうまく関係が育めていないことも多いです。たとえば以下のような言動が増えると、「親にも問題あり」として支援者も離れていきます。

・当事者(本人)の要求や要望を鵜呑みにして、支援者に対して過度な支援やケアを求める

・本人や親にとって思い通りにならないことがあると、「うちの子がかわいそう」などと平然と言い放つ

・本人と一緒になって支援者の不平不満を言う

・本人の能力を見極めずに、「地元の有名企業に勤められるようにしてほしい」などと言及する

同様に、障害者枠での就労や、就労継続支援事業所(A型やB型)への通所が継続できないケースでは、本人が「自分は障害者ではない」「周りのレベルが低すぎる。ここは自分の居場所ではない」などとおっしゃる場合も少なくありません。

そしてこのようなケースでは親御さんが、障害を理由に本人に対して伝えるべきことを伝えていない、という傾向が顕著にあります。

・障害の診断や公的支援を受けながらも、本人と障害についてきちんと話し合ったことがない

・障害年金を受給しながら、それを本人には話していない(親の感覚で金銭面をコントロールしており、本人は収支に見合うお金の使い方ができない)

 つまり【障害者としての利益は享受しながら、子供に障害者としての生き方を教えていない】のです。そのため社会的にみれば「障害者」の枠組みに入っているのに、本人だけがそれを頑なに認めないという、歪んだ構図ができあがっています。

親御さんなりに一生懸命、養育してきたことは分かります。しかし現実は、年齢を重ねるほど親だけでは対応が難しくなっていきます。問題が肥大化したときには、「昔から本人のことを知っている」支援者ほど、ありがたい存在はありません。理想を押しつけすぎず、ゆるやかにつながりを持ち続けることが大切であるといえるでしょう

 

◎弊社の電話相談では、行政への相談の仕方や、ご本人対応などに関するアドバイスも行っております。お気軽にお問合せください。